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2023年度 辞令交付式における学長訓辞


辞令交付式にあたり、理事長・学長として一言、ご挨拶申し上げます。ただいま、新役員を含む、総計60名の皆様へ辞令を交付させていただきました。
それぞれの職責において、皆様の有する知識、経験、能力を最大限発揮していただき、本学の理念・目的である
・グローカルな知の拠点となる大学 ・未来の実践的担い手を育てる大学・地域に開かれ地域と向き合う大学
としてのさらなる充実と発展に向け、大いに貢献していただくことを期待しております。

さて、オミクロン株の弱毒化に加え、ワクチンや抗ウイルス薬の開発、医療・看護・衛生管理技術の進歩などにより、ポストコロナへの道筋がようやく見えてきた状況です。本日はまさにポストコロナ教育研究の構築にむけた出発の日であると認識しております。大学における学びの原点は教員と学生、また学生同士が面と向き合った会話と議論にあることは論を待ちません。オンラインツールの利点を享受しつつ、コロナ禍で変容してきた価値観や教育・研究様式がどこまで本質的なものなのかを見極め、本来の姿を取り戻していきたいと考えます。

社会全体に目をむけますと、既存の抗生物質が効かない薬剤耐性細菌の蔓延、繰り返される異常気象、経済摩擦、国際紛争など、我々が直面する問題は山積みとなっています。
これまで現代社会に対し、「先行きが不透明で、将来の予測が困難な時代」といった表現が多く使われてきていますが、最近では「危機の時代Times of Crisis」という表現も新聞などでよく目にするようになりました。かつて、第4次中東戦争の勃発に伴うオイルショックの時代、あるいは米ソの対立に基づく冷戦時代の例えとして使われた表現です。

大学をとりまく環境もまた、「危機の時代」に入っているといっても過言ではありません。18歳人口は減少に歯止めがかからず、昨年度の入試では定員割れの私立大学が47.5%と過去最高に及んだことが報告されています。この波は国公立大学へも確実に押し寄せてきており、全国国公立大学の受験倍率一覧をみると、受験の実質倍率が1を切る学科やコースが散見されるようになってきました。このままの状況が続けば、日本の高等教育、またそれと表裏一体にある研究力・技術力が地盤沈下していくことは想像に難くありません。
今年度の入試動向をみると、受験生の首都圏への一極集中傾向が戻っており、首都圏に隣接する地域の地方国公立大学は特に強い危機感を持たなくてはならないと感じます。昨年度入試と比較すると、本年度、山梨県内国公立大学への個別学試験出願者数は15%も減少し、全国平均の減少率1.3%を大きく上回りました。さらに、個別学力試験での欠席率が高いことも、本年度県内大学入試の特徴でした。

こういった危機的状況を乗り越えるには、入試の時期や方法、さらに広報活動の改革はもちろん、教育と研究の両面から大学自体の特色と強みをさらに強化するとともに、新しい価値を創造することで、受験生に選ばれる魅力ある大学へと進化することが重要です。
地域の大学は単に競い合うのではなく、連携してそれぞれの弱点を補いあうことで、元来の強みをさらに先鋭化していき、地域における高等教育全体の特色や存在感を高め「若者が集う街づくり」を進めていくことが必要だと思います。また、広く社会人に大学を開放し、アカデミアとしての特色を出したリカレント教育やリスキリングにも積極的に対応していくことが、地域からの信頼を得ることに繋がります。
昨今では、高校において探究学習が浸透してきていますので、高大接続の取り組みにより、研究や学びに対し意識の高い高校生を地域の大学への入学に導き、大学の学びと研究で夢を育て、その成果を地域社会で具現化していく、という流れをつくることも地域の拠点大学として重要になってくるでしょう。

本学の自他共に認める強みは、担任制・チューター制、少人数ゼミ、キャリア形成、地域でのフィールドワークなどを取り入れた、学生一人一人に向き合う実践的できめ細やかな教育にあります。本学学生による地域おこし等のすばらしい取り組みが、新聞やWebで毎年多く紹介されています。学内の授業評価アンケートにおいては、専門知識や技能に加え、コミュニケーション・スキル、問題解決能力、自己管理能力がついたことを実感する学生の割合が年々増えています。こういった特色ある教育をさらに深化、発展させ、社会へ発信していくことが重要であり、これまで一連のCOC事業で培ってきた他大学との連携や現場でのPBL学習などの取り組みもおおいに利活用していくべきだと思います。

また、現在展開中の「文部科学省 地域創生人材育成プログラム構築事業」であるPENTASYAMANASHIで実施している出口一体型教育プログラム、即ち、学生と社会人の共学のもと、出口である地域の産業界や自治体も一体となって高等教育にあたり、地域人材を育成していく事業はこれからの高等教育において極めて重要であり、「学びのやまなしモデル」として継続しつつ、質の向上を図り、県、内外にさらに強くPRしていきたいと考えます。

昨年度には文部科学省の「地域活性化人材育成事業SPARC」に採択されました。この事業では、これまでの取り組みを更に深化させるとともに、山梨大学との大学間連携に係る特例制度を活用し、本学の学部教育の中に地域デザインに関わる創造的な文理融合教育や、ヒューマンサービスにおけるDX人材の育成教育を導入し、高校・大学・社会における継続的な学びを支援していく「学びのやまなしモデル」を定着、発展させていくことを目指しています。
既に社会全体がIoTやAI、ビッグデータ解析などの最新技術をあらゆる文化や産業に取り入れて実現する知識集約型社会へと進化している現在、価値創造を目指した文理融合教育の導入は高等教育界において喫緊の課題であります。本学でも地域の要望に応えた、新たな価値を生み出す特色あるプログラムとなるよう、全学的に取り組んでいきたいと考えます。

大学の教育研究の質を向上させるため、大学院、高度専門職人材養成部門の充実も重要な課題です。大学院看護学研究科修士課程は既に創設20年を超え、高度な研究力を身につけ、最先端の医療看護を牽引する専門看護師や研究者が育っており、完成年度を迎える博士課程とともに、県内のみならず日本の看護界を牽引する大学院としての発展が期待されます。看護実践開発研究センターでは、本年度から、感染看護の分野で熟練した技術と深い知識を身につけるための「感染管理」認定看護師教育課程がスタートします。また、人間福祉学部では来年度から、児童虐待対応の専門家を育てる日本初の大学院「人間福祉学研究科」の開設を計画しています。
このように教育の高度化も着実に進んでおり、本学の特色、強みとなるよう、さらなる質の向上を目指していきたいと考えます。

なによりも高等教育の本質は研究にあり、その上に高度な教育や地域貢献が成り立つと考えます。大学は単に既存の学問を右から左へ教育するだけではなく、自らの研究により教員自身がその専門分野の最高水準を保ち、生きた学問を教授する責務があると思います。質の高い大学教員と社会で実践を積んだ実務家の方々の教育があいまってこそ、地域がめざすべき教育が展開でき効果が発揮できるのだと考えます。
まずは、教員自ら研究する姿を学生に見せ、研究方法やその内容を直接に指導する。また学生と一緒に研究活動を展開する。そういった真摯な姿勢こそが大学の本来の姿であり、大学における人材育成の原点だと思います。

危機的な現代社会にあって、大学が時代を先導する新たな「知」を社会に発信する「地(知)の拠点」であり続けるためには、教職員、役員が自主・自律のもとに、共通の理念を持って教育、研究、地域貢献事業に従事することが必要です。透明性のある自由な議論を共有し、山梨県立大学の伝統、強みを基盤にして、大学をさらに発展させていきたいと思います。

以上、辞令交付における、ご挨拶とさせていただきます。


                                      令和5年4月3日 
                                      山梨県立大学理事長・学長 
                                      早川 正幸

早川正幸理事長

辞令交付式の様子

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