人間福祉学研究科
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研究科長あいさつ
人間福祉学研究科 研究科長/髙野 牧子
山梨県立大学大学院人間福祉学研究科は、2024年春、開設しました。
日本初の新たな実践型の大学院として、子ども家庭福祉を柱に、子ども理解からソーシ
ャルワークまで、幅広く深く学ぶことができます。
219,170 件(速報値)、この数字は何の件数か、わかりますか? これは、こども家庭
庁が発表した、令和4年度中に全国232か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件
数で、過去最多です。国も法整備や支援対策を進めてはいますが、ますます増加傾向が顕
著な子ども虐待、1つ1つの事件の背景には、さらに深い闇が広がり、複雑化、深刻化して
います。
本研究科では、子ども虐待に対応できるプロフェッショナルな人材を育成します。学び
の基礎として、人間福祉学という大きな視点に立ち、子どもの人権や歴史的流れを押さえ
た上で、質的、量的研究方法も学びます。その上で、より専門性の高い虐待に関する科目
群(一部必修科目)の他、多様な子どもたちを理解するための科目群や地域福祉、多職種
連携等を学ぶソーシャルワークの科目群と、計17科目から自分の興味関心のある授業を選
択し、受講することができます。
さらに、子ども虐待対応に関わる現場での実習と、その実習で得た疑問や課題を大学の
教員からスーパーバイズを受ける演習が組み込まれています。こうした現場と大学との連
環的学びにより、研究的視点をもった実践者を育成していきます。
本研究科は、日本の子ども虐待対策の最前線に立つ西澤特任教授(臨床心理学・臨床福
祉学)、奥山特任教授(医学博士、子どものこころ専門医)、相澤特任教授(子ども家庭
福祉、非行臨床)の3名の著名な先生方が、専門の講義に加え、豊富な臨床事例や研究か
らスーパーバイズしていきます。また、人間福祉学部の教員も合わせ、総勢21名の教員体
制で多様な専門性から指導していきます。あらゆるニーズに応えられる指導体制の下、人
間福祉の現場へ還元できるような学びを深めていってほしいと存じます。
子どもたちの最善の利益を守るため、ぜひ、共に学びあい、人間福祉分野でリーダーと
して活躍されることを期待しています。
子ども家庭福祉分野、保育・幼児教育分野、ソーシャルワークの分野等幅広く活躍できる能力の獲得を目指します。
修得する能力
・多職種と連携し、虐待リスクのある子ども・家庭に対する包括的な支援体制を構築できる能力
・理論と実践を結びつけ、新たな知見を導き出し、効果的な制度改革や政策等を提言できる能力
授業の特徴
・学生のライフスタイルに合わせたオーダーメイド型の授業形態
昼夜開講制で、働きながら学べる授業体制を用意。授業は平日の夜間(週2~3日間)と土曜に受講。オンラインを用いた遠隔授業と対面授業を併用。
・分野横断型のカリキュラム構成
子ども虐待領域を柱に、子ども理解領域、ソーシャルワーク領域の関連科目から幅広く選択履修。
・現場での実践的な学びと大学教員からの指導助言(スーパーバイズ)による学びの循環
児童相談所、児童養護施設などでの実習・演習と専門的な指導助言を融合し、経験を理論化。
養成する人材像
・保育現場での虐待早期発見、子どもケアのスペシャリスト
・多職種連携・家庭支援のスペシャリスト
キャリア展開
・保育所等のリーダー的職員
・包括的な支援を地域で展開できる児童家庭支援センター等のリーダー的職員
・行政機関における虐待対策の専門官
教育理念・目的等
教育理念・目的
教育目標
- 子ども家庭福祉分野において、虐待・ネグレクトが子どもに与える心理的・精神医学的影響及び虐待を生じる親・家族の心理社会的特徴に関する専門的知識を有し、虐待相談業務や子どもへの治療的養育、心理的ケアを担当できる高度な技能を有する人材を育成します。
- 子どもの保育・幼児教育の分野において、虐待・ネグレクトを受けた子どもや虐待傾向を有する親・家族の心理社会的特徴に関する専門的知識を有し、保育所・認定こども園等を基盤とした子ども及び家族への支援を提供できる高度な技能と実践力を有する人材を育成します。
- ソーシャルワークの分野において、虐待・ネグレクトを受けた子どもや虐待傾向を有する親・家族の心理社会的特徴に関する専門的知識を有し、保健、医療、教育などの諸機関、多職種と連携し、虐待リスクのある子ども・ 家庭を支援するための包括的支援体制を構築できる人材を育成します。
3つの方針
1.修了認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)
本研究科の教育理念・目的、また、人材養成のための教育目標に照らして、その課程修了にあたっては、子ども家庭福祉などに関する高度な専門的知識、スーパービジョンの実践力、関係者・機関との連携力、理論と実践を高次元で統合し、課題解決を主導する力が求められる。これにより学位は、大学院学則で規定する課程の目的を充足した上で、以下の資質・能力を有することが認定された者に授与される。
① 子ども虐待を地域の福祉課題として捉え、子ども虐待や、子どもと家庭のウェルビーイングの増進に関する高度な専門的知識を修得している。
② 高度な専門職としてスーパービジョンを実践し、子ども家庭福祉などに関係する諸機関との連携を推進する能力を修得している。
③ 子ども家庭福祉などに関連する理論と実践を結びつけ、課題解決に向けて論理的に考察する能力を修得している。
2.教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)
ディプロマ・ポリシー(修了認定・学位授与の方針)に定めた知識・能力を修得するために、以下に示すカリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)に沿って教育課程を編成する。その運用にあたっては、人間福祉及び子ども家庭福祉に関わる高度な実践力と研究力を基盤に、専門的知識・技 能と教育的な指導力をもって質の高い教育を展開する。 なお、科目構成は、基礎科目、基幹科目、関連科目、実習・演習科目、研究科目の5つに分類される。
① 高度職業人として必要な知識と技術を修得するために、人間福祉及び子ども家庭福祉の 理論に関する「人間福祉学特講」を「基礎科目」の一つとして配置し、必修とする。また、子ども虐待の臨床をより深く理解するための科目を「基幹科目」と位置づけ、そのうちの 3 科目を必修とする。さらに、様々な領域・実践現場において虐待問題に関わる 対応力を高めるために「関連科目」を選択科目として配置する。
② 対人援助の実践能力や組織改善に向けたスーパービジョンの能力を高めるため、「スーパービジョン特講」を「基礎科目」の一つとして配置し、必修とするとともに、「実習・演習科目」を選択必修科目として配置する。
③ 「実習・演習科目」での実践を基に、修士の学位論文又は特定の課題についての研究レポートを作成する際に求められる分析力や研究力を培うため、「人間福祉学研究方法」を「基礎科目」の一つとして配置し、必修とするとともに、「研究科目」を選択必修科目として配置する。学修成果については、科目毎のシラバスにおいて到達目標及び成績評価基準を明示し、筆記試験、レポート、発表・討論等の評価方法に基づき到達度を評価する。また、修士の学位論文又は特定課題研究レポートについては、研究科の定める審査基準に基づき到達度を評価する。これらの評価により、ディプロマ・ポリシーに定める資質・能力の修得を判断する。
3.入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)
入学者の受け入れにあたっては、カリキュラム・ポリシーを踏まえて、子ども家庭福祉、幼児教育・保育、ソーシャルワークの各分野における一定の基礎的な知識・技術・実践力を有する者を対象として、以下のアドミッション・ポリシー(入学者受け入れの基本方針)を適用する。
① 修士課程の学修の基盤となる人間福祉及び子ども家庭福祉に関する基礎的知識を有してい る。
② 人間福祉及び子ども家庭福祉に関する高度な実践のために、論理的な思考力、柔軟な発想力、基礎的な省察能力、及びコミュニケーション能力を有している。
③ 人間福祉及び子ども家庭福祉について、現状に対する問題意識を持ち、実践と研究に取り組む意欲を有している。